軍事施設に隣接する核施設、その上を軍用機が
本州の最北端、青森県の下北半島は斧の形の半島だ。約2000平方キロあまりに自衛隊と米軍の軍事施設が集中し、そのすき間に核施設がひしめいている。
自衛隊の射爆場が3つ。陸奥湾にはガメラレーダーと大湊基地。半島の下には米軍と自衛隊の三沢基地。向かいの津軽半島には車力分屯基地とXバンドレーダーサイトがある。
一方核施設は、MOX燃料を全炉心で燃やす予定で建設中の大間原発をはじめ、太平洋側に東電と東北電の2つの東通原発。むつ市には使用済み核燃料中間貯蔵施設。半島の真ん中の「六ヶ所核燃サイクル施設」には再処理工場、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、MOX燃料工場が並ぶ。
原発から出た使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場。原発より危険と言われるこの再処理工場の上を軍用機が飛び、敷地周辺への模擬弾等の落下事故も頻繁だ。テロの標的にもなりかねない。
24年後に最終処分場に搬出できるのか?
六ヶ所の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターには英仏で処理を済ませ、25年前から返還が始まった高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)が一時貯蔵されている。30年から50年間の貯蔵の後最終処分場へ搬出するという国との取り決めだ。すでに半分が過ぎたが、いまだに搬出先は未定だ。このままだと六ヶ所が最終処分場になってしまいかねない。
その最終処分場候補地として昨年来焦点化されているのが北海道の寿都町と神恵内村だ。
老朽原発再稼働と中間貯蔵施設の関係
再処理が始まらない中、六ヶ所再処理工場のプールは全国から運び込まれた使用済み核燃料ですでに満杯だ。そこで、再処理を待つ間、一時保管する施設が中間貯蔵施設だ。
むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設は、事業主体の東電と日本原電の使用済み核燃料のみを受け入れる約束で建設され、昨年11月に新規制基準に合格した。
ところが合格を受けた翌月には、電気事業連合会が、2社のみでなく全国の電力会社で共同利用する案をむつ市と青森県に申し入れた。約束が違うとはっきりと拒絶すべきだが、むつ市も県も不快感を示すばかりだ。
この共同利用案は関西電力の救済策と言われている。新規原発の稼働がむずかしい今、稼働40年を経て廃炉にすべき高浜、美浜の老朽3原発の再稼働を急ぐ関西電力は、この時点で再稼働同意の条件として20年末までに福井県から求められていた使用済み核燃料の県外搬出の候補地探しが難航していたからだ。
六ヶ所は福島の10倍超の汚染水を毎年放出
六ヶ所再処理工場では2006年のアクティブ試験(最終試運転)の段階で、国内の全原発からの年間放出量を超えるトリチウムを、たったひと月で放出したことがある。
六ヶ所再処理工場がフル稼働となれば、福島第一原発由来の汚染水860兆ベクレルの10倍以上、年間9700兆ベクレルのトリチウムを毎年毎年、海に空に不法に流し続ける計画だ。
核燃サイクルをやめればすべての原発は止まる
国の推進する核燃サイクルでは、さらに大量の核廃棄物が出る。技術的にもむずかしく、実現の可能性は限りなく低い。高レベル放射性廃棄物を増やす虚構の核燃サイクルをやめれば、すべての原発は即座に止まるしかない。
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2021年3月3日発行第58号
特集「原発震災」から10年 掲載