再処理工場の上を軍用機が飛ぶ下北半島
東京から青森県に移住して半年あまり。恐山と六ヶ所村くらいしか思い浮かばなかった下北半島だが、北上すると次々に現れる軍事施設と核施設の多さ、近さに驚かされる。
半島の南には米軍と自衛隊の三沢基地。半島に入ると射爆場が3つ。陸奥湾にガメラレーダーと大湊基地。向かいの津軽半島には車力分屯基地とXバンドレーダーサイトがある。
半島の真ん中の「六ヶ所核燃サイクル施設」には再処理工場、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、MOX燃料工場が並ぶ。北には東北電(審査中)と東電(建設中断)の2つの東通原発。むつ市には使用済み核燃料中間貯蔵施設。最北端には世界初のフルMOX燃料の大間原発(審査中)がある。
原発から出た使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場。原発より危険と言われるこの再処理工場の上を軍用機が飛び、敷地周辺への模擬弾等の落下事故も頻繁だ。テロの標的にもなりかねない。
一時貯蔵のはずの六ヶ所が最終処分場に?
六ヶ所の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターには英仏で処理を済ませ、25年前から返還が始まった高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)が一時貯蔵されている。30年から50年の貯蔵後、県外の最終処分場へ搬出するという国との約束だ。最終期限まで残り24年だが搬出先は未定だ。昨年、北海道寿都町と神恵内村が手を挙げたが、NUMO(原子力発電環境整備機構)によれば調査と建設に30年はかかるという。決まらなければ六ヶ所がそのまま最終処分場になってしまいかねない。
青森では「青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地としない条例」を制定しようという署名運動が始まっている。
中間貯蔵の共同利用は関電の老朽原発救済策
再処理が始まらない中、六ヶ所再処理工場のプールは全国から運び込まれた使用済み核燃料ですでに満杯だ。そこで、再処理を待つ間、一時保管する施設が中間貯蔵施設だ。
むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設は、昨年11月に新規制基準に合格した。事業主体の東電と日本原電の使用済み核燃料のみを受け入れる約束で建てられた。
ところが合格を受けた翌月には、電気事業連合会が、2社のみでなく全国の電力会社で共同利用する案をむつ市と青森県に申し入れた。「約束が違う」とはっきりと拒絶すべきだが、むつ市も県も不快感を示すばかりだ。
この共同利用案は関西電力の救済策と言われている。福井県は高浜1・2号、美浜3号の再稼働同意の条件として使用済み核燃料の県外搬出の候補地を昨年末までに示すよう求めていたが、関電は提示できなかった。共同利用案が通れば関電は願ったり叶ったりなのだ。
汚染水放出、福島も止め、六ヶ所も止める!
六ヶ所再処理工場では2006年のアクティブ試験(最終試運転)の段階で、国内の全原発からの年間放出量を超えるトリチウムを、たったひと月で放出した実績がある。
六ヶ所がフル稼働となれば、福島第一原発の汚染水タンクに貯蔵されているトリチウム860兆ベクレルの10倍以上の9700兆ベクレルが毎年、環境に放出され続ける。福島汚染水を六ヶ所汚染水の露払いにしてはならない。
核燃サイクルを止めて原発を全廃しよう
国の推進する核燃サイクルはもんじゅ廃炉ですでに破綻が明らかだ。高レベル放射性廃棄物を増やすだけの虚構の核燃サイクルを止めればすべての原発は即座に止まらざるを得ない。核燃サイクルを止めて原発を全廃に!
出版労連機関紙『「mi・ra・i・e つなごう・未来へ」出版に働くものだからこそできること』
2021年3月10日発行№44
「原発の廃絶のために」特集号 掲載